2019.03.04

アパレル在庫廃棄の現状

  • サスティナブル・プラクティス
  • 再利用
国内企業の取り組み

近年、廃棄物に関する注目度が上がっている中で、
アパレル業界の廃棄物問題にも注目が集まり始めています。

これまでも、古着屋さんは昔からありましたし、
購入後着なくなった衣類の再利用に力を入れている企業や店舗はありました。

しかし今回取り上げたいのは、顧客の手元に渡る事なく、
店頭から処分場へ向かうことになる余剰在庫の問題についてです。

需要と供給のミスマッチ
需要と供給のミスマッチ

(出典:「繊維産業の課題と経済産業省の取組 参考資料」経済産業省製造産業局生活製品課,2018.6発行,10頁, http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/apparel_supply/pdf/report01_03_00.pdf)

現在日本では、アパレル業界から廃棄される衣類の量が
年間で100万トンに及ぶとされています。

この重さは、約40万トンが積載できるとされている
世界最大の貨物船(ヴァ―レ・ブラジル)が2隻あっても足りません。
(想像つきませんよね…)

その中には、新品のまま焼却処分される衣類もあるそうです。

上記の折れ線グラフは国内の衣料品市場の動向を表したものです。
バブル崩壊後、市場規模はグラフのように減少してきています。

現在消費されている衣服はおよそ13億点なのに対し、
供給されている衣服は27億点近く。
つまり、売れ残る余剰在庫が14億点に上るとみられています。

(参照:「新品の服を焼却!売れ残り14億点の舞台裏」NHK,クローズアップ現代,2018.9.13放送https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4182)

市場が縮小していくにも関わらず生産数は変わらない結果、
余剰在庫はますます増えていくばかりです。
この事態はどうして起こってしまうのでしょうか。

どうして売れ残るのか?

売れ残ってしまう理由として主に以下のようなものが挙げられます。


①ファストファッションの台頭

低価格で衣類が販売されるようになった結果、
1着当たりのコストを下げる為に、
企業がやむを得ず大量生産をしなくてはいけない状況に陥り、
余剰在庫を生む原因になりました。
1シーズンで購入した衣類を廃棄してしまうという、消費者側の問題にも繋がっています。


②流行の先読みの必要性

アパレル業界の根本として、
衣類の企画・開発から販売までに半年から1年近くかかることもあり、
流行を先読みしなければならないという構造があります。
そのため需要を予測して発注をする必要があり、
予め在庫を確保すべく、大量生産せざるを得ない状況になってしまったといえます。
また、昨今流行の移り変わりが早くなっているせいで、
新品のまま処分場へ向かう衣類も発生してしまいます。


③ブランド価値の保全

再販・転売を行った際のブランドイメージへの悪影響を懸念する企業もあります。
安易に価格を下げてしまうことで、消費者が衣類の質など商品そのものを信用できなくなり、
ブランド価値を下げてしまうというリスクがあるからです。

(参照:「繊維産業の課題と経済産業省の取組」経済産業省製造産業局生活製品課,2018.6発行,http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/fiber/pdf/1806seni_kadai_torikumi2.pdf)

余剰在庫を減らすには
余剰在庫を減らすには

過剰な在庫を生むことが前提となっている業界の現状を改善すべく、企業も対策を打ち出し始めています。
最近注目され始めている対策を、少しご紹介します!


①IT・AIによる店舗運営効率化

店員さんがタブレットを用いて接客をしている光景を見たことはありませんか?
アパレル業界では今、電子化やIT・AIを用いた技術が広まっています。
今後は、流行の把握や在庫管理もITやAIによって行われることが予想されます。

こうした技術によって、
仕入れの予測や在庫数僅少の他店舗へ在庫を回すことが可能になり、
結果的に在庫問題の解決や廃棄の低減につながっていくのではないでしょうか。


②在庫再販の支援

実際に、余剰在庫を減らすための具体的な取り組みがいくつか生まれてきています。
その一つが、「Rename(リネーム)」というサービスです。
(参照:「Rename(リネーム)」株式会社FINE, https://c-fine.jp/rename/)

Renameは、各企業の衣類在庫を「Renameブランド」として再販するサービスです。
加工工場で元のブランドタグや洗濯表示タグの付け替え加工を行い、
ブランド名表示を変更して再販します。
元のブランド名が分からないため、消費者からのブランド毀損を防ぎつつ、
再販が実現するという仕組みです。
Renameではオンラインストアを設置しており、約1200点ほどの商品が販売されています。

これからの流れ

廃プラスチック問題を皮切りに、
国際的に廃棄物に関する注目度が高まってきている中で、
アパレル業界が現状のような運用スタイルを維持し続けるのは
非常に難しい段階にあるように思えます。

現在、国内の企業でもサスティナビリティやCSRの活動が求められています。
その中でこれまで通りに廃棄をし続ける経営方針を続けていくわけにはいきません。

これまでに多くの企業が取り組んできた
販売後の着古された衣類をリサイクルやリユースに回す形。
これも十分廃棄物を減量させる為の重要なアクションだと考えられます。

しかし、これまで通りに生産をし続けていては
大量生産、大量廃棄という構図は変わらず、
最終的な廃棄量は変わりません。
現状の廃棄量を減らすには、
生産量自体を減らしていく必要があります。

流行を把握するために集めたデータを駆使し、
生産量を先読みする力が必要とされる時代がどの企業にも必ずやってくるはずです。

安いだけが全てじゃないのかも……?

「洋服はセールの時に買った方がお得!」
そう思ってシーズンオフの期間にまとめ買い、
なんてこともよくあると思います。

でも、その背景には大量の売れ残りや、
廃棄されている衣服があるということを知っていると、
購入の際に、少し見方が変わりますよね。

実際、セール商品を買わないというのは難しいと思いますが、
ファストファッションだからといって、毎シーズン買い替えるのではなく、
「この服は本当に長く着るのか…?」
と、よく考えて購入してみましょう。

今後変化していくであろうアパレルの業界の構造に、
私たちも、社会全体としても、
柔軟に対応することが求められているのかもしれません。

「アパレル廃棄の問題 – 求められるサステナビリティへの取り組み」,株式会社FINE, 2018年3月28日,

「衣類廃棄量は年間約100万トン!アパレル業界が注目するリユースとは?」, modelpress, 2018年9月18日,

「ファッション販売2019年02月号掲載『2020年代に取り組みべき5つの経営課題』」, 小島ファッションマーケティング, 2019年2月号掲載,